在留資格の確認は何を見る?外国人採用の社会保険・雇用保険の手続きを整理|南信州の社労士

外国人採用は、入社前に確認すべきことが多く、どこから手を付ければよいか迷いやすいテーマです。
在留資格の確認が遅れたまま入社準備を進めると、必要情報の回収が後ろにずれ、社会保険や雇用保険の届出も押されやすくなります。差し戻しが一度起きるだけで、期限対応や現場説明まで重なり、担当者様の負担は急に増えます。
この記事では、社内で迷いやすい「採用から入社の手続き」までを整理してまとめていきます。
手続きが詰まりやすい手続きの全体像を整理する
外国人採用の入社手続きは、流れ自体は複雑ではありません。ここでは、迷いやすいポイントと一緒に整理します。
まず前提として、在留資格によって就労の可否や範囲が変わります。ここが固まらないまま入社準備に入ると、入社後に働き方や業務の任せ方を調整することになり、現場への説明も難しくなりがちです。
次に、在留カードの確認です。確認方法が担当者ごとに違うと、後から「何を根拠に確認したか」が説明しづらくなります。確認のやり方を社内で揃えておくと、担当が変わっても運用が安定します。
ここまでを、実務の順番で並べると次のとおりです。
- 在留資格の確認(就労できるか、どの業務まで任せられるか)
- 在留カードの確認(確認方法、確認した記録の残し方)
- 社会保険の手続き(必要情報の回収、届出の作成と提出)
- 雇用保険の手続き(加入要件の判断、所定労働時間と雇用見込みの整理)
- 外国人雇用状況の届出(被保険者かどうかで方法が分かれる、雇入れは翌月10日まで)
社会保険は、国籍に関係なく被保険者となる考え方が前提にあり、必要情報が揃わないことで手戻りが起きやすい分野です。
雇用保険は、加入要件の判断が軸になります。一般に、週20時間、31日以上の雇用見込みという要件の見立てが必要になり、勤務設計が固まらないほど迷いが長引きます。
最後に、外国人雇用状況の届出です。雇入れの場合は翌月10日までなど、被保険者に当たるかどうかで通知方法と期限が整理されています。期限は変えられないので、社内の締切をどう置くかが大切になります。
実務で影響が出やすいケース一覧
在留資格の確認:就労できるかより先に整理したいこと
在留資格の確認は「就労できるか」だけを見ると、実務ではまだ足りません。採用予定の仕事内容や働き方と、許可されている活動の範囲が合っているかまで含めて整理する必要があります。
現場で相談が増えやすいのは、次のような状況です。
- 採用したい職種や担当業務のイメージが社内で共有されておらず、確認の前提が揃っていない
- 予定している勤務時間が固まっておらず、フルタイムかパートかで迷いが長引く
- 入社が先に決まり、後から「この働き方で大丈夫か」を確認し始めてしまう
また、留学や家族滞在など就労が認められていない在留資格があり、報酬を受ける活動には資格外活動許可が必要になることがある点も確認が必要です。
このあたりは、確認が遅れるほど調整コストが増えます。先に「どの業務を任せるのか」「勤務時間をどう設計するのか」を決めてから確認に入ると、判断しやすくなります。
在留カードの確認:確認方法を社内で揃える
在留カードは、確認の結果をどう扱うか、どこまで確認したと言えるか、本人へどう説明するかがポイントです。判断で迷うケースとしては、次のような場合が挙げられます。
券面をどこまで見ればよいか分からない
在留カードは確認項目が多く、何を最低限チェックすべきかが曖昧なまま進みがちです。特に、就労範囲に関係しやすい情報を見落とすと、入社後に業務の任せ方を調整することになり、現場への説明が難しくなります。
在留期限が近い場合の扱いで迷う
期限が近いこと自体が直ちに雇用不可を意味するわけではありませんが、更新手続きの見込みや入社後の段取りが絡むため、会社としてどこまで確認し、どこから先は本人に確認してもらうかの線引きが必要になります。曖昧なままだと「入社後に更新できなかったらどうするのか」という不安が社内に残ります。
氏名表記の扱いが社内システムと合わず止まる
外国人採用で地味に時間を取られるのが、氏名の表記ゆれです。採用時の履歴書、在留カード、社保・雇保の届出、社内の勤怠や給与システムで表記が揃わないと、名寄せや照合で手が止まります。
「何を正とするか」「ローマ字と漢字表記が混在した場合どうするか」を社内ルールにしておくと、次回以降の採用も楽になります。
コピーや画像データの取り扱いに迷う
在留カードの写しを保管する運用はよくありますが、保管の目的と範囲が曖昧だと、本人から「なぜ必要ですか」と聞かれたときに説明が難しくなります。
必要な範囲に絞って保管し、閲覧できる人や保管先を決めておくと、本人にも社内にも納得感が出やすくなります。
目視確認でよいのか 追加の確認手段が必要か迷う
目視だけだと、後から「どのように確認したか」を説明しにくいことがあります。確認方法を統一しておくと、担当者が変わっても運用が揃い、監査や社内説明にも耐えやすくなります。
こうした迷いを減らすには、次を会社として固定しておくのが有効です。
- いつ確認するか(内定時 入社前 入社当日など、どのタイミングで確認するか)
- 誰が確認するか(主担当と代替担当を決める)
- 何を確認したとするか(最低限見る項目を決める)
- どう記録するか(確認した日 確認者 確認手段を残す)
- 写しを扱うならどう保管するか(保管先 取扱者 保管期間の基準)
在留カードの確認は、制度の知識だけではなく、「確認の範囲」と「記録の残し方」が定まると、本人の安心にもつながり、入社後の現場運用もスムーズになります。
社会保険:資格取得で差し戻しが起きやすい場面
社会保険は、適用事業所に常時使用される方であれば、国籍や性別、賃金の額等に関係なく被保険者となる考え方が示されています。
実務で問題になりやすいのは「加入するかどうか」より、届出がスムーズに通る状態に必要情報が揃っているかです。差し戻しが多くなるケースとしては、次のような場合が挙げられます。
氏名の表記ミスによる照合不一致
ローマ字、カタカナ、スペースの有無、順序(名・姓)などが、本人申告、在留カード、社内システム、提出書類で一致しないと、照合が通らず差し戻しや再提出につながりやすくなります。
生年月日や住所など、基本情報の入力ミス・記載漏れ
住所の表記(番地、ハイフン、建物名の扱い)や生年月日などの基本情報は、単純な入力ミスでも差し戻しの原因になります。採用が重なる時期や月末月初は、見落としが増えやすくなります。
入社日・資格取得日の取り扱いが社内で揃っていない
「入社日=資格取得日」として処理するのか、実態に合わせて判断するのかが社内で揃っていないと、作成時に迷いが出て記載の誤りにつながります。結果として修正や再提出が増えます。
届出の添付や提出前チェックが担当者依存になっている
作成後のチェック項目が人によって違うと、同じミスが繰り返されます。差し戻しが続く会社は、提出前チェックが「忙しいから省略」になりやすい傾向があります。
差し戻しを減らすには、難しいルールを増やすより、次を社内で固定する必要があります。
- 入社前の回収締切を前倒しで置く(番号確認が間に合うようにする)
- 氏名表記の社内ルールを統一する(入力の正と例外の扱いを決める)
- 提出前チェックを定型化する(最低限の確認項目を固定する)
- 入社日・資格取得日の考え方を共有する(担当者が迷わない状態にする)
差し戻しが多い会社ほど、原因は特定の担当者のミスではなく、運用が属人化していることが多いです。上記4点を行うだけでも、差し戻しは目に見えて減りやすくなります。
雇用保険:加入要件と勤務設計がずれるところ
雇用保険は、パートやアルバイトといった呼び方ではなく、要件に該当するかどうかで判断します。一般に、週の所定労働時間が20時間以上で、31日以上の雇用見込みがあることが軸になります。
実務で判断が長引くのは、勤務設計が最後まで確定しないケースです。たとえば、シフト確定が入社後になりやすい職場や、繁忙期で勤務時間が変動しやすい職場では、要件判断に必要な前提が揃いにくくなります。
現場で起きやすい流れは次のとおりです。
- まず入社だけ決め、勤務時間や契約期間の見込みが後回しになる
- 要件判断が遅れ、届出の作成が後ろにずれる
- 期限が迫り、慌てて回収と作成が走り、ミスや確認が増える
まずは、手続きの話を先にするより、雇用契約上の所定労働時間や契約期間の見込みを早めに固めることが大切です。
外国人雇用状況の届出:期限と段取りで詰まりやすい
外国人を雇い入れた場合、氏名や在留資格等を確認し、ハローワークへ届け出ることが求められています。雇用保険の被保険者となる場合は資格取得届等の提出で通知し、雇入れの場合は翌月10日までなど、通知方法と期限が整理されています。被保険者とならない場合も、所定の通知書を提出し、雇入れの場合は翌月10日までとされています。
ここで大変になりやすいのは、期限が月末月初の業務と重なることです。期限そのものを変えられない以上、社内の締切をどう置くかが現実的な対策になります。
たとえば、締切を次のように分けて置くと、負担を分散することができます。
- 入社前の回収締切(不足が出たときに取り返す余裕を残す)
- 入社直後の作成締切(入社が重なっても処理が流れる)
- 提出の締切(翌月10日を迎える前に完了させる)
期限当日をゴールにすると、差し戻しや不足対応の余裕が残らず、結果として担当者の負担が増えやすくなります。
よくある質問(FAQ)
- 在留資格の確認は何を見ればよいですか
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在留資格ごとに認められる活動内容が異なるため、採用予定の業務内容や働き方がどこに当たるかを確認します。就労できるかどうかだけでなく、任せる業務と勤務設計まで含めて整理すると手戻りが減ります。
- 在留カードは目視確認だけで足りますか
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目視だけに寄せると運用が担当者の経験に依存しやすくなります。案内されている確認手段を使い、確認方法と記録の残し方を社内で揃えると安定しやすくなります。
- 社会保険の資格取得で差し戻しが起きやすいのはどんなときですか
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届出に必要な情報が揃っていないまま作成すると、確認と再提出が発生しやすくなります。個人番号または基礎年金番号の未記入で返戻となる取扱いが案内されているため、入社前の回収締切を前倒しで設計し、不足が出たときに取り返す余裕を残すのが現実的です。
- 雇用保険の判断で迷うのはどんなときですか
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所定労働時間や契約期間の見込みが固まらないときに迷いやすいです。シフト確定が遅い職場は、契約条件の整理を先に進めると手続きが安定します。
- 翌月10日までの届出が間に合いません
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期限を守るには、社内の回収締切と作成締切を前倒しで置くことが効果的です。期限当日をゴールにすると、差し戻しや不足対応の余裕が残りません。
まとめ
- 外国人採用は、在留資格の確認を採用条件(業務内容、勤務時間)とセットで整理すると、入社後の調整や現場の混乱が起きにくくなります。
- 在留カードの確認は、確認した事実を「いつ、誰が、どの方法で確認したか」まで残せる形にすると、担当が変わっても運用が安定します。
- 社会保険、雇用保険、外国人雇用状況の届出は、必要情報の回収が遅れるほど手戻りが増えます。提出期限から逆算して、回収締切と作成締切を分けて置くと、月末月初の負担が下がります。
実務のご相談を受ける立場から見ると、外国人採用がスムーズに進む会社ほど「確認のやり方が個人の経験に依存しない」状態を作っています。特に、在留カードの確認結果の残し方、氏名表記の扱い、本人にお願いする情報の範囲が整理されると、回収が早くなり、社保・雇保の手続きも通りやすくなります。採用が一回きりで終わらない会社ほど、最初の一度で運用の型を作っておくと、次回の採用が楽になります。
